第9話 前半終了
95 U-名無しさん sage 05/03/04 22:02:20 ID:BGxKKn7B0
代表のキックオフで試合開始。
ボールを受けた小笠原がいきなりロングボールを蹴りこむ。
俺のところだ。見上げて距離を目測。その瞬間、壁にぶつかったような衝撃。
鈴木だ。鈴木の背中が俺の前に立ちふさがっている。
熱が、熱さが、鈴木の背中から伝わってくる。怒りの熱だ。
少し下半身で押してみるがびくともしない。むしろこっちがずり下がっている。
完璧にポジションをとられている。トラップ際を狙うしかない。
だがボールは股の間からいれた俺の足の届かない位置にきれいに落とされた。
くそったれ。なにもできないじゃないか。
鈴木が上がってきた福西にボールを受け渡す。福西はすぐに左のアレックスへ。
ライン際でボールを運ぶアレックス。田中が並走する。
アレックスは一瞬、ドリブルで抜くそぶりを見せたが、
中央に下がり気味にきれこむと、流れてきた小笠原にパス。
しまった、俺がついておくべきところだ。
後ろを振り返ると、鈴木はもう前線に上がっている。
DFに任せていそいで小笠原の前を切る。
小笠原は俺に目もくれず、中央に横パス。遠藤が受ける。モニカが対処。
遠藤はさらに右へ。田中誠が上がっている。
FWの高田が横から追うが、追いつく前に田中はボールを前へ。加地がひいて受ける。
そのまま中へ少しドリブルしてすぐにまた中央へ。もう一度遠藤。
やばい。ボールが回りはじめた。
96 U-名無しさん sage 05/03/04 22:04:08 ID:BGxKKn7B0
遠藤から横パス。小笠原がトラップ。俺がつく。
小笠原は左にターンしてパス、と見せかけてボールは出てない。フェイントだ。
すかさずきりかえして右を向くと、右サイド奥へロングボール。
いつのまにか加地のマークが外れている。
SBの渡辺が必死に追っているが、あれはクロスが上がるのを止められない。
加地がしっかりと中を見てからクロス。
俺は小笠原と絡み合うようにしてゴール前へつめる。
クロスが上がる。これはボールが来る。小笠原が飛ぶ。俺も飛ぶ。
小笠原の背中のユニフォームを引っ張ってみるが効果がない。やばい。
だが、ボールの弾道は俺たちを越えていく。ラッキーと思ったのもほんの一瞬、
後ろにいやな気配を感じる。見なくてもわかる、鈴木だ。
鈴木がワントラップして強烈なシュート。コースに飛び込んだ内藤の体がブロック。
内藤がもんどりうって倒れる。銃で撃たれたような倒れっぷりだ。
こぼれたボールにアレックスが走りこんでくる。今度は神様は向こうの見方らしい。
これは俺の役目らしい。しょうがない。スライディングでシュートコースに飛び込む。
ばちんとすねのあたりに鈍い衝撃。まにあった。
だがそのボールは今度はゴール正面にいる小笠原のまん前に転がる。
神様、勘弁してくれ。小笠原の強烈なミドルシュート。ゴール左上に一直線。
楢崎さんが横っ飛び、間一髪のタイミングで弾き出した。
ボールはそのままゴールラインを割る。セーーフ。
どっと疲労が体中に押し寄せる。負け試合でよく経験するあの嫌な感覚だ。
前半はあと残り何分だ?もうそんなにないはずだ。
104 U-名無しさん sage 05/03/06 19:29:01 ID:E/gluVjC0
時間のたつのが遅い。
ロングボールを競ったタカシが空中戦で福西にあっさりとつぶされる。
つんのめって倒れるタカシ。笛が鳴らないかな、と期待するが、審判は無視する。
こぼれたボールを右サイドの田中が持ちかけるが、アレックスと中澤に囲まれる。
コブラツイストのような格好で体を抑えられるともうなにもできない。
田中が倒されてボールを奪ったアレックスがドリブル。笛は鳴らない。
田中がいない分、前が開いている。
俺が寄る。「モニカ!中!」俺のカバーはモニカに頼む。
俺と向き合ったアレックスが妖術師のような足捌きで怪しいリズムを刻み始める。
勘弁してくれ、と内心愚痴のひとつもでる。
こっちも足に来はじめてるのにこれを抑えろってか?
淡々としたリズムからいきなりボールがすぱーんとライン際に蹴りだされる。
アレックスの体が躍動する。懸命についていく。
だが、追いついたアレックスは急ブレーキ。右足に持ち替えて中へ切れ込む。
腰が踏ん張りきれない。俺の左側をアレックスが抜けていく。
105 U-名無しさん sage 05/03/06 19:29:39 ID:E/gluVjC0
そのままクロス。エリア内に上がっている。鈴木と内藤の競り合い。
頭ひとつ高く抜け出した鈴木がヘディング。ループ気味の軌道。
ジャンプして飛びついた楢崎の手の上を越える。
決められたか?と一瞬息が止まったが、ボールはバーに当たってエリア内に跳ね返る。
はねかえったボールを小笠原が迷いなくシュート。
DFの誰かに当たってボールが跳ね返る。
こうなるとラインも戦術もあったもんじゃない。ただの肉壁だ。
エリアの外へ転々と転がったボールをモニカがとりにいくが、
それより早く、遠藤が後ろから全速で走りこんでくる。強烈なミドルシュート。
ボールは弾丸のようにあっというまにエリアを抜けて、
そのままバーの上を飛んでいった。枠をそれた。思わず、ふーっとため息がこぼれる。
そこに女神様の声にも聞こえる審判の笛。ようやく前半が終わった。
107 U-名無しさん sage 05/03/07 20:25:05 ID:XZEkGyd90
モニカタソ (;´Д`)ハァハァ