第8話 夏みかん
80 U-名無しさん sage 05/02/28 23:36:10 ID:4TPulbdS0
左サイド、DFが振り切られる。玉田が一気に高速ドリブルでエリアに侵入。
CBがカバーに行くより早く、玉田の左足が振りぬかれる。ナイフのような切れ味。
やられた、と思ったが、楢崎さんの体が横に飛んだ。
そのまま長身の体が地面で弾む。よし、ボールはしっかり体の下にある。
さすが、代表キーパー。頼りになるったらありゃしない。
上出来、上出来、いいよ、その調子。とDFを励ます楢崎さんの声が聞こえる。
そんなことはない。さっきから再三、DFが振り切られている。
決定機だけで4,5回はあっただろう。それを全部止めているのは楢崎さんだ。
まあ楢崎さんにしてみれば、4,5回で済んで上等なのかもしれないが。
とりあえず今日の楢崎さんがアタってるみたいなのが俺たちにとっては救いだ。
81 U-名無しさん sage 05/02/28 23:37:13 ID:4TPulbdS0
先制点をとったあとは、一方的に攻め込まれる試合展開になっている。
引いて守る気はないし、先制直後はまだ中盤でのプレスがかかっていたが、
時間の経過とともにボールが奪えなくなり、
ゴール前にボールを入れられることが増えてきた。
こうなるとさすがにうちのDFラインがじりじりと下がりはじめた。
おそらく時間は30分を過ぎたあたり。
やばいな、と思う。このままじゃジリ貧だ。前半持ちこたられるか。
ここは一発流れを変えるようなプレーが欲しい。
楢崎さんのキック。ボールがハーフウェーラインを越える。
タカシが落下点に入るが、福西に押えられてきつそうだ。
先制してから少しずつ向こうの当たりも強くなってきてる。
タカシもここしばらく、DFが必死で蹴り飛ばす方向の定まらない
クリアボールを右に左に追っかけ続けてる。スタミナはきついだろう。
ポストというより福西と競ったタカシの体に当たったボールが
偶然ではあるがどんぴしゃで俺のところへ転がってきた。
それを見た右サイドの田中が走る。
さっきの攻撃で上がっていたアレックスの戻りが緩慢だ。右サイドがあいている。
体に電撃が走った。これはチャンスになる。
82 U-名無しさん 05/03/01 14:44:10 ID:wiQQPjhD0
追加点!? (;´Д`)ハァハァ
83 U-名無しさん sage 05/03/01 15:40:20 ID:ejwt+hpK0
カウンター クルー!
84 U-名無しさん sage 05/03/01 22:52:10 ID:jEKOmYRx0
右サイドへドリブルで進む。田中が俺の前、ライン際を走っている。
さっきまでタカシと競っていた福西がアレックスの穴を埋めるべく詰めてくる。
このまま内をきって俺を外へ押し出すつもりか。
ちんたら考えることは許されない。即座に判断する。
かといって判断だけ速くても意味はない。
状況を見極めて適切な選択肢を考えた上で判断しなければならない。
見る、考える、決める、動く。そのサイクルを最大限のスピードで繰り返し続ける。
それがピッチに立つという行為だ。
スペースがなくなる前にフリーの田中にパスを送る。頼む、中澤さん、動いてくれ。
田中がサイドラインぎりぎりでトラップ。
「左!左!」「つめろ!つめろ!」「戻れ、戻れ!」声が錯綜する。
田中にボールが渡ったのを見て、中澤さんがゴール前を離れ田中につく。
狙い通りだ。
85 U-名無しさん sage 05/03/01 22:56:40 ID:jEKOmYRx0
田中がすばやくボールを横に入れる。
よくわかってるじゃん。そのとき、俺は福西の左脇をすり抜けている。
ボールを受ける前にルックアップして中を確認。
視野の左すれすれでモニカが走ってるのが見える。
ボールを右足でトラップ。俺と田中のワンツーのような格好になった。
置き去りにした福西が俺のすぐ後ろから追ってきてる。あの人の潰しは強烈だ。
本気でこられたらトラックに轢かれたカエルのようになるのがオチだ。
足元に目がいくのをこらえて、ルックアップ。
右サイドの田中を見る。DFラインを見ながらライン際で張っている。
俺の目の動きにつられた中澤は田中から離れられない。すぐ後ろから人の気配がする。
頼む、わかっててくれ。心の中で祈る。
左前方へ右足のインサイドでグラウンダーのパス。
さっき中を見たとき、DFラインの前、遠藤の後ろにスペースが見えた。
あのときのモニカはそこを狙って走っていたはずだ。
きっとモニカにもあのスペースが見えている。
88 U-名無しさん sage 05/03/02 22:51:31 ID:dLn3JoWv0
どんぴしゃ。宮本の前のスペースに走りこんできた
モニカの足元に俺が出したボールが吸い込まれる。
一瞬、対峙する格好になった宮本があわてる。チェックに行きたいが後ろがいない。
裏を取られる格好になった遠藤が慌てて後ろから挟みこむ。
だがお構いなしにそれより早くモニカは左へさらに流す。早い判断。
またたく間にボールが右サイドから左サイドに移る。
俺たちの流れるようなパス回しに、周囲の観客から歓声が上がる。
聞こえてるか、モニカ。あれは俺たちのプレイへの歓声だぞ。
サイドを転がるボールを受けたのは山口。
加地が左サイドの攻防に釣られ、やや中に絞っていた分、
山口にはサイドのスペースが存分に与えられている。
あいつのあんないい上がり、はじめてみたかも。走りながら俺は思う。
山口がワントラップ、ライン際まできれこんでから、
落ち着いてしっかりと中を見てからクロスをあげる。
いくら代表が相手でも目の前にいなければ、普段の試合と違いはない。
中央にいいクロスが上がる。ペナルティスポットあたり。川口は前に出ない。
タカシが宮本相手に懸命にポジションを競っているが、さすがに分が悪い。
宮本がタカシにわずかに競り勝ってヘディングでクリア。
だがこの時間はサッカーの神が俺たちについている。
89 U-名無しさん sage 05/03/02 22:54:44 ID:dLn3JoWv0
タカシが競った分、ヘディングのボールに力がない。
ペナルティエリアの少し外。ボールはモニカの正面へ落ちてきた。
足元にぴたりと落として、左足でボールを持つ。
遠藤がすばやくチェックに行ったその瞬間、モニカがついに牙を剥いた。
左足の裏でボールを後ろに引いて、そのまま右足を軸にターン。
絵に書いたように美しいルーレット。金髪のポニーテールがきれいになびく。
刹那の後、モニカは完全に遠藤と体を入れ替えている。
目を疑う出来事に、さすがの代表のDFも一瞬ボールを見てしまう。
一秒にも満たないほんのわずかな時間の思考停止。
だがピッチという戦場では、それが時に命取りとなる。
そのミスを許すことなくモニカが即座に宮本の横を通すスルーパス。
俺はDFラインの間を駆け抜けて、一気にエリアに侵入する。
トップスピードでラインの裏に抜け出た俺の足元にぴたりとボールがくる。
誰かが手を上げてオフサイドをアピールしているが、旗は上がらない。
90 U-名無しさん 05/03/03 12:27:57 ID:f0OS04Wa0
あとはヨシカツたんだけか!?
最後のショーブだな
91 U-名無しさん sage 05/03/03 22:25:26 ID:4iawS5Y30
右のインサイドでトラップ。ボールを右足の前に置く。
川口がおどろくほどの瞬発力でボールに飛び込んでくる。
早い。すさまじい反応の早さだ。けどまにあわない。まにあわせない。
コンパクトな振りで、軽く。けれど十分な強さを与えて蹴る。
俺の足に心地よい感触を残して、ゴールへ飛んだボールは
川口の手を抜けて静かにゴール右下におさまり、
ネットを水面に広がる波紋のように、きれいにきれいに波打たせて揺らした。
審判の笛が鳴る。2点目だ。
観客からのぱらぱらとした拍手が、俺の耳に届く。
派手なガッツポーズはしない。代わりに右のこぶしをぎゅっと握り締める。
モニカからもらったパスの感触が、打ったシュートの余韻が、
まだ俺の右足に残っている。
92 U-名無しさん sage 05/03/03 22:26:42 ID:4iawS5Y30
タカシが顔をくしゃくしゃにして飛んでくる。
「やったな、この野郎」お前、祝福してくれるのは嬉しいけど、力入れすぎ。
ばしばしと叩かれた頭がひりひりした。
でも、チームの誰が点を入れても、一番先に飛んでくるのはタカシだ。
そんなタカシが喜んでる姿を見るのが俺も実は結構好きだ。
みんながかわるがわる祝福に来る。
練習試合だから抑え目だけど、なんてったって相手は日本代表だ。
モニカもきた。「nice shoot!」
ご褒美のチュぐらいあるかと思ったが、それはさすがに無理な頼みだった。
代わりに手と手を合わせて喜びを分かち合う。
目の前でモニカの夏みかんのような胸が上下にリズミカルに揺れた。
ふと、こういうふうにモニカと一緒に喜べる試合は当分ないんだな、と思う。
もしかしたらもう二度とないのかもしれない。
でも感傷に浸ってる暇はなかった。後ろを振り返る。
まださっきのはラッキーゴールということもできたかもしれない。
もうそれは通らない。無名のガキんちょどもに
2点のリードを許した代表のメンバーから熱いオーラが立ち上っている。
さっきまでと顔つきが違う。男の怒りだ。
93 age 05/03/03 23:20:46 ID:P9SdO1e30
モニカタソ (;´Д`)ハァハァ
94 U-名無しさん sage 05/03/04 08:18:25 ID:KtTR9LLU0
夏みかん(*´Д`)ハァハァハァハァ/lァ/lァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \アノ \ア ノ \ア