71 U-名無しさん sage 05/02/25 23:01:03 ID:bmgTJ9c70

 俺はわざと時間をかけてゆっくりとボールをセットする。
 位置はペナルティエリアのわずかに外、俺たちから見てゴール正面やや左。
 テレビ中継があれば今頃アナウンサーが
 絶好の位置でのフリーキックです!と叫んでいることだろう。
 ボールの右にモニカ、左に俺が立つ。
 モニカの左足でゴール右へ巻くか、俺の右足でゴール左を狙うか。
 この位置のフリーキックじゃお約束みたいなものだが、壁が近い。
 審判に抗議すると、心持ち下がったがほとんど変わらない。
 本気で気にしてたわけじゃなかったので、別にかまわなかった。
 俺はふと横のモニカを見て、なにか変な仕草をしてるのに気づいた。
 右手で股間を軽くおさえるように何度か叩いている。
 こいつ、なにやってるんだあ?



72 U-名無しさん sage 05/02/25 23:06:16 ID:bmgTJ9c70
 ある有名な選手が、緊張したとき自分のアレをぎゅっと握ってリラックスした、
 というエピソードを聞いたことがあるが、モニカもそういう癖があるのか?
 だがモニカが壁のほうを見ながらにやにやしてるのを見て、
 そして壁に入ってる中澤や宮本が、一瞬呆然と、
 ついでみるみるうちに顔が怒りで赤くなるのを見て、その仕草の意味がわかった。
 モニカは、私のフリーキックが当たって、あなたたちの大事なアソコがつぶれないよう、
 しっかり手で守ってなさい、と身振りで示しているのだった。
 顔中から冷や汗が出た。代表に挑発かますとは、まったくなんて女だ。
 こっそり横目で審判を見ると、さっき俺が抗議した壁の距離を
 もう一度確認していて、こっちには全然注意を向けていない。ほっとした。
 審判が二、三歩下がって笛を吹いた。



73 U-名無しさん sage 05/02/26 11:40:59 ID:BSWVg2Iv0
モニカの股間(;´Д`)ハァハァ


76 U-名無しさん sage 05/02/27 23:40:30 ID:wo+rHA6x0
 モニカがスタート。俺も一拍ずらして動きはじめる。
 しっかりと左足を踏み込んで、蹴る準備。
 だが、それより早くモニカの左足がゴルフのティーショットよろしく
 ボールを刈りとっていった。
 ここまでゴールに近ければモニカのキック力で十分狙える。
 モニカの蹴ったゴールは壁の上をきれいに弧を描いて越えた。
 俺が蹴ると思いこんでいた、壁の面々はまったく反応できない。
 ボールは壁を越えたところで急激に落下し、
 川口が横っ飛びで伸ばす手の先を抜けてゴール右隅に吸い込まれた。
 その瞬間、俺の耳にはゴール裏の金網の向こうに陣取った観客の、
 「うおお」という悲鳴のような歓声が聞こえた。一瞬遅れて審判の笛。ゴールだ。
 モニカが雄たけびをあげて両手を突き上げる。
 俺もガッツポーズ、そしてモニカとしっかり抱き合う。
 無名高校が日本代表から先制点を奪ったんだ、こんな痛快なことがあるか?
 モニカの胸の感触を自分の胸で感じて楽しんだのもつかの間、
 あっというまに俺たちはチームメイトに取り囲まれる。
 おい、もうちょい楽しませろっつーの。

77 U-名無しさん sage 05/02/27 23:41:42 ID:wo+rHA6x0
 小熊は思わず立ち上がった。隣で「ぐお」という声を漏らしたのは滝沢か。
 「なんじゃ、いまのフリーキックは・・・すさまじいキレだったぞ」
 「・・・壁を越えてすとん、と落ちましたね。それも半端じゃない落ち方だった」
 滝沢の声も驚きにかすれてる。
 Jでもめったにお目にかかれない弾道だった。
 あのクラスのFKを蹴れる日本人はいったい何人いる?
 比喩じゃなくてほんとうにケツが浮いたぜ、まったく・・・
 ふたりともそのまましばらく言葉が出ない。
 フィールドではボールが中央に戻され、試合が再開された。
 だがそこかしこに今の強烈なフリーキックの余韻が漂っている。
 代表の選手も、毒気を抜かれたような、それとも夢でもみたような、
 いま見たものが信じられないというふわふわ感が抜けていない。
 ゴール裏にいたお客さんはいいものみたな、と小熊は思う。
 あれは金払ってでも見る価値がある。
 できるなら俺もゴールの裏でいまの弾道を拝みたかった。


78 U-名無しさん sage 05/02/27 23:42:15 ID:wo+rHA6x0
 「しかしまあ見事に決めましたね」
 「代表の連中、油断してたからな・・」小熊は振り返る。
 「あのお姉ちゃんがあれだけ左が蹴れるとは、
 いまの15分ちょっとの時間じゃわかりっこないだろう。
 ロクにボールにも触っていなかったしな。
 おまけにボールをセットしたのはあの男の10番だったし、
 お姉ちゃんが先に走り出せば、お姉ちゃんはダミーで、
 蹴るのはあの10番だって思っちまったのも無理はない。
 川口もいつもに比べれば、最初の反応が遅かった」
 「あの子が蹴るかもしれない、とわかってたら違いましたかね」
 小熊は沈黙する。
 川口なら止めたかもしれない。
 だが、確実に止められたかと聞かれれば、わからない。
 それが小熊の結論だったが、口にはしなかった。




79 U-名無しさん 05/02/28 16:25:07 ID:5IKbQHWs0
先取点 (;´Д`)ハァハァ