第22話 女子サッカー界の現状
268 U-名無しさん sage 2005/04/04(月) 00:49:44 ID:niez+wvo0
やれやれ、メディアというのはほんとおそろしいもんだな・・
小熊は家のダイニングでテレビを見ながらしみじみと心の中で呟いた。
普段サッカーなんかまったく報じない昼の情報番組が、
昨日の練習試合とモニカのネタをトップに持ってきている。
川内さんの筋書き通りというわけか・・・。
小熊は妻が入れてくれたコーヒーを口に運ぶ。
昨日試合観戦に誘ったときに滝沢が口にした「仕掛け」の中身が
小熊にはもうだいたいつかめていた。
川内キャプテンの公約とも言えるキャプテンズミッションのひとつとして、
女子サッカーの活性化があげられていることは周知の事実である。
アテネ五輪でベスト8に進出し、競技力の向上は実現したが、
一方、女子サッカーをとりまく環境はいまだ厳しいものがある。
男子もJクラブの経営は相変わらず苦しいが、
徐々にリーグのクラブ数も増え、裾野は確かに広がっている。
地域密着の理念、企業からの独立も、少しずつではあるが実現しつつある。
だが、女子選手たちの置かれた環境は、お世辞にも恵まれたとはいえない。
アテネで活躍したFWの荒川はスーパーのレジ打ちのパートをしている、
というのでずいぶん話題となったが、
あのアテネでの活躍後も荒川はレジ打ちのパートを続けているのである。
荒川だけではない。多くの選手が驚くほど貧弱な環境でプレイしているのが現実なのだ。
269 U-名無しさん sage 2005/04/04(月) 00:53:23 ID:niez+wvo0
今年、Lリーグからは1社が撤退した。
幸いに今回は代わりにスポンサードしてくれる企業が見つかって、
チームの解散という事態は避けられたが、
女子サッカーの置かれている状況はそれほどまでに脆弱なのである。
女子サッカーを発展させ、日本に根付かせる。
その目的のためには女子サッカーに人の目を集め続けなければいけない・・・
テレビではモニカのVTRが流れている。
岩崎が顧問をしているんだ、当然サッカー協会との連絡はとっていただろう。
当然モニカがアメリカでどの程度のレベルの選手だったかは調査したはずだ。
抜群の実力に加え、マスコミ受けするルックスと外国人というもの珍しさ。
女子サッカーにとってのどから手が出るほど欲しいスターだ。
ひとりのスターがどれほどスポーツのあり方を変えてしまうかは、
古くはミスターのプロ野球にはじまり、最近では宮里藍の活躍する女子ゴルフを見ても
改めて説明の必要がないほどだ。
スターが生まれることで観客が増え、興行がスムースに成り立つ。
当然、協会としては、その露出方法について考えたはずだ。
それが代表との練習試合。それ以上何かをする必要はない。
彼女の実力なら適当な舞台をあてがえば、あとは自然と輝きを放ってくれる。
それが本物のスターというものだ。
もっともその輝きは少し強烈過ぎたがな・・・小熊はひとり苦笑する。
271 U-名無しさん sage 2005/04/04(月) 09:31:26 ID:NnZsBq3I0
日本人の血が混ざってブロンドってありえるの?
273 U-名無しさん sage 2005/04/04(月) 12:21:11 ID:d2/aMf380 BE:76999537-
ありえるの。
274 U-名無しさん sage 2005/04/04(月) 23:14:28 ID:6LAirn3x0
まさかキャプテンも代表が負けるとは夢にも思ってなかっただろう。
しかし結果としてよりセンセーショナルな話題となり、マスコミは飛びついた。
これからのなでしこジャパンの活動をマスコミは我先にフォローするだろう。
そしてこのニュースを見た多くのサッカーが好きな女子中学生、高校生が、
自分たちの可能性について希望を持つようになるだろう。
それは女子サッカーの競技力向上はもちろん、
彼女たちが観客として、そしていつか母親としても、
日本でのサッカーというスポーツの裾野を広げることにつながっていく。
「ほんとすごいわね、この女の子。モニカちゃんって言うんだ」
妻がテレビを見ながらにこにこと話す。
「男相手にここまで対等にやっちゃうんだもんね。気分いいわあ」
妻の無邪気な横顔を見ながら、小熊は腑に落ちるものがあった。
そうか、女性にしてみると、女性が男と対等に、
いや男以上に活躍するというのは痛快極まりないことなのだ。
一応、男女平等とされる日本の社会でも、現実には
女性はいろいろな理不尽なハンデを負っているのが現実である。
スポーツという正々堂々とした勝負の場で、男をなぎ倒す痛快さ。
きっと世の女性の多くがこのニュースに快哉を叫んでいるのだろう。
しかも女子高生が相手じゃ、嫉妬の感情の湧きようもない。
無条件で諸手をあげて、受け入れられる素地があるわけだ。
いきなりなでしこジャパンでデビューさせてたら、こういう反応はなかったかもな。
「わたしもサッカーやってみようかしら。そしたらあなた教えてくれるでしょ」
若く甘かった時代とは大違いな妻の腹のラインに目を向けると、
小熊はそっとためいきをついた。
「おい、出かけてくる」
どこへ行くの、という妻の声に、協会へ、と短く答える。
昨日の試合のビデオが届いているはずだ。