第15話 モニカちゃんを出してください
172 U-名無しさん sage 2005/03/21(月) 23:27:08 ID:qfjOXkHU0
ある日の練習前、岩崎が部のメンバーを集めた。
「協会から連絡があって、今度日本代表と練習試合をさせてもらえることになった。
ワールドカップ最終予選の前の調整ということだ。
代表がしっかり調整ができるよう、協力したいと思う。きっちり準備しておけ」
みんなから歓声が上がる。代表との試合なんてビッグニュースだ。
いつまでたっても自慢できる貴重な経験だ。
そんな浮かれた雰囲気の中、タカシがすいません、と手を上げた。声がうわづっている。
岩崎がいぶかしげな目でタカシを見る。みんなの視線がタカシに集まる。
「その試合にモニカちゃんを出してください。お願いします」
いきなりタカシが大きく頭を下げた。
「実力はいうまでもありません。だから、モニカちゃんを出してください」
相変わらず、本能のままに動くやつだな・・と俺は心の中で呆れる。
いまどき、スクールウォーズじゃないんだぞ、感動ドラマなんか流行らない。
空気の読めない奴だ、ここは一発俺がびしっと・・・。
俺は一歩前に出て「俺からもお願いします」
タカシの横に出て、深々と頭を下げた。
「お願いします」キャプテンの山口もでてくる。
いつしか部の全員が口々に言いながら、頭を下げていた。
その様子をモニカは口を手で抑えてじっと見ていた。目には涙がたまっている。
ばーか、泣くなよ。俺は心の中で呟く。
当たり前のことをしてるだけじゃん。泣くほどのことじゃないって。
「誰が使わないって言った?」そこに岩崎の声。
俺たちは頭を上げる。
「今回はモニカはスタメンで使う。その分、誰かが出られなくなる。
モニカに負けないようにしっかり練習しておけよ」
みんなにみるみるうちに笑顔がこぼれる。やったー、と喜んでる奴もいる。
岩崎が口元だけにかすかに笑みを浮かべて
「相手が代表である以上十分に作戦を練る必要がある。よく準備をしておけよ」
173 U-名無しさん sage 2005/03/21(月) 23:49:41 ID:qfjOXkHU0
「ん?」モニカがなにか言った気がして、俺はモニカのほうを振り向いた。
練習の帰り道。冬の陽が落ちるのは早い。もう完全に真っ暗だ。
自転車通学の俺たちは並べて自転車をこいでいた。
「アリガト」
モニカの、南の海のように青い目がじっと俺を見ている。
「シアイ、オネガイしてくれてアリガト」
俺はのどの奥が詰まるような胸苦しさを感じる。
「バーカ。それに礼はみんなに言っておけ」
フフ、とモニカが笑った。
そのまま二人とも黙って自転車を走らせる。
制服の短いスカートから、健康そうな白い太ももが見え隠れする。
普段こいつの足なんてグラウンドで嫌ってほど見ているのに、
こういう状況で見るとなぜかエロくて少し落ち着かない。
一緒にサッカーやってると感じねえけど、こいつ、女なんだよなあ。
大通りの交差点につく。ここを俺はまっすぐ、モニカは右に曲がる。
「ジャアネ、スケベサン」
俺の心の中を見透かしたように一言言うと、
モニカが笑って手を振って夕闇の中へ消えていく。
顔が火照るのを感じながら「うるせえ」と言い返す。
その言葉はモニカの耳に届いただろうか。
174 U-名無しさん sage 2005/03/22(火) 01:02:47 ID:P53Oa65i0
モニカタソの太もも (*´д`)ハァハァ
175 U-名無しさん sage 2005/03/22(火) 06:53:05 ID:G4SE7igh0
白い太もも キタぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(゚∀゚)ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
(*´Д`)ハァハァハァハァ/lァ/lァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \アノ \ア ノ \ア
176 U-名無しさん sage 2005/03/22(火) 22:57:38 ID:VukKYqXy0
監督の岩崎がまた選手交代を告げる。
サイドバックの渡辺が呼ばれ、タッチラインに走っていくが、
足取りが重い。相当疲労している。
その隙にベンチの下級生に時間を確認する。
35分です、あと少しです、頑張ってください、という答え。
よく35分持ちこたえたな、というのが本音だった。
おそらく後半は一本もシュートを打たせてもらってない。
相手のシュートは数えたくもない。たこ殴り状態だ。
でも、まだ2−0でリードしているのはこっちだ。
点をとられていないのが不思議としかいいようがないが、
ツキがこっちにあるのだけはまちがいない。
あと10分。もう正直体は限界に近い。
けど、あと10分で終わってしまうのが惜しい。
177 U-名無しさん sage 2005/03/22(火) 22:58:46 ID:VukKYqXy0
その日から俺たちの練習にはいっそう熱がこもった。
代表が相手とはいえ、所詮は大会でもないただの練習試合。
だけど俺たちの気合は冬の選手権にかけるそれにも負けてなかった。
モニカと一緒にできる数少ない試合。
相手が代表といえどぶざまな試合だけは決してできない。
といっても技術ではるかに上回る相手。
いつもと同じサッカーをしていたら、まるで相手にならないだろう。
まずモニカのフィジカルを考え、中盤でのボールの奪い合いは避ける。
DFはボールを持ったら中盤をすっ飛ばして、
徹底して前線にロングボールを入れる。
FWはとにかくそのボールを競り、
そのこぼれ玉をMFがひろって、攻撃を組み立てる。
モニカはキープをなるたけ封印して、速いテンポでパスを捌く。
そのためには俺と両サイドがモニカがボールを持つと同時に、
パスコースができるようすばやく動き出さなければいけない。
言うのは簡単だし、基本中の基本だ。
しかしこれをやり続けるのは至難の技だ。
ばんばん無造作にほうりこまれてくるロングボールをひたすら追いかけて
競ることの辛さは、FWをやったことのある人間ならわかるだろう。
その意味でタカシに今回課せられる指名は苦行に近いものがあった。
178 U-名無しさん sage 2005/03/22(火) 22:59:32 ID:VukKYqXy0
俺たちMFもサボることは瞬時たりとも許されない。
代表の攻撃力を考えると、4枚のDFを上がらせるのは無理、と
俺たちは結論を出していた。常に4人は残しておく。
すなわち前線と、おそらく引き気味になるDFラインの間の
広大な領域を俺たちMFで、攻撃に守備にとカバーに走ることになる。
その運動量を考えるとそれだけで気が遠くなりそうだった。
中国大陸を駆け回ったという昔の騎馬民族よりも、
俺たちが走らなければいけない距離は長いんじゃないかとさえ思える。
「一言で言うと、とにかく相手より走れ、だな」
タカシがわかりきったまとめをした。
相手より一歩でも二歩でも、とにかく多く走ること。
技術が上の相手に勝つには、運動量で上回ることが最低条件だ。
その上で数少ないチャンスをものにする。
そのチャンスは必ずモニカが作り出してくれる。その自信はあった。